坂本龍馬の映画10選

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『坂本龍馬』

(1927(昭和2)年)

古畑任三郎でおなじみの田村正和さんのお父様・バンツマこと阪東妻三郎さんの主演作『坂本龍馬』。

戦前の作品の為、フィルムは近江屋で龍馬たちが襲われるクライマックス部分しか現存していないけど、内容は黒船来襲からの龍馬を描いている。

この映画の中で、龍馬を暗殺したのは佐々木只三郎を含む見廻組になっていて、すでに現在語られる坂本龍馬にまつわる話と違いは全く見当たらない。

つまり、よく言われる「坂本龍馬は司馬遼太郎によって有名になった。」というのは、まさに都市伝説で、その雛形は当時すでに出来上がっていたようだ。

戦前の映画は幕末モノがとても人気があって、坂本龍馬は、当時からその中心人物だったのだ。

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『海援隊』

(1939(昭和14)年)

坂本龍馬は時代劇スター・月形龍之介さん。

近藤長次郎を昭和の剣戟スター「鞍馬天狗」のアラカンこと嵐寛寿郎さんが演じている。

この年のキネマ旬報ベストテン映画。

※戦前の時代劇映画は、明治から続く自由民権運動の影響もあって、幕末モノは、豊臣秀吉の「太閤記」、赤穂浪士の「忠臣蔵」と共に大変人気があった。

併せて国定忠治など、明治の圧政に苦しむ渡世人なども市民の人気を得ていた。

つまりこの当時の時代劇は国民主権の色合いが強く、軍国主義とは真逆の内容だったにも関わらず、戦後GHQの不理解によって大量の時代劇映画を焼かれてしまったのは、とても残酷で不幸な話だ。

そして、この映画の翌年から国の検閲が厳しくなり、戦意高揚映画に趣きが変わってゆく。

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『暗殺』

(1964(昭和39)年)

司馬遼太郎の小説『奇妙なり八郎』を基に、庄内藩出身の志士・清河八郎を主人公として描いた実験的要素の強い問題作。

坂本龍馬は、その清河八郎を醒めた視点で語る役柄として登場する。

(坂本龍馬役は俳優・中井貴一さんの父・佐田啓二さんだ。)

当時、盛んだった学生運動なども、かなり色濃く影響しているように感じるんだけど、清河八郎と坂本龍馬を対比する視点は、とても興味深い。

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『人斬り』

(1969(昭和44)年)

これは「人斬り以蔵」と呼ばれた土佐の岡田以蔵を描いた映画だけど、坂本龍馬を戦後の大スター・石原裕次郎さんが演じているので取り上げた。

脇の田中新兵衛役を三島由紀夫さんが演じていて、切腹のシーンが儚くて美しい。

彼はその翌年、自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺を遂げている。

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『幕末』

(1970(昭和45)年)

主演は中村錦之助さん(後の萬屋錦之介さん)。

中村錦之助さんは、この他にテレビ『竜馬がゆく』でも坂本龍馬を演じている。

彼の歯切れのいいセリフ回しや、キビキビした身のこなしは、きっと当時の龍馬像だったのだろう。

この時代は世界中で人種や性差別についての解放運動が盛んに行われていたので、この映画も身分制度に対する龍馬の怒りが中心に据えられている。

つくづく坂本龍馬はその時代の潮流に合わせて描かれやすい人物だと感じる作品だ。

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『龍馬暗殺』

(1974(昭和49)年)

坂本龍馬を演じるのは原田芳雄さん。

余談だけど、この坂本龍馬はカッコよ過ぎませんか?!

いや、ホントにカッコよくてセクシーだ。

話は、龍馬が暗殺される前々日の、慶応3年(1867年)11月13日からの2日間を追っている。

今までの幕末モノとは違い、人物がとてもリアルに描かれているのが印象的だ。

龍馬を暗殺するのは定番の佐々木只三郎ではなく、薩摩藩士、中村半次郎の配下の右太という武士。

その右太を演じているのは松田優作さんだ。

 

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『幕末青春グラフィティ Ronin』

(1986(昭和61)年)

上に挙げた原田芳雄さん演じる坂本龍馬と比べると、同じ人物をこんなに広げて解釈できる坂本龍馬という人は、やはりどこか捉えどころのない人物なんだなと思えてくる。

あくまで私見だけど、武田鉄矢さんは何を演じても、どこか教育者の顔になってしまう(金八先生の印象で、こちらがそれを投影してしまうのだろうか?)ので、型破りな坂本龍馬を演じるのは、どこか根っこの部分で無理を感じてしまう。。

 

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『龍馬を斬った男』

(1987(昭和62)年)

この映画と、次に取り上げる映画の二作からは、当時のバブルの匂いがプンプンしてくるように感じる。

ここで取り上げたのは、この作品には大変申し訳ないけど、それを言いたかったのが強くて、この後1991年に公開された『幕末純情伝』(「実は沖田総司は女だった。」ということで、沖田総司を女優・牧瀬里穂さんが演じている。)と同様に、どこか腰が座らないフワフワした印象を受ける。

「龍馬を斬った男」佐々木只三郎を演じる萩原健一さんも、坂本龍馬役の根津甚八さんも好演だと思うのだけど、どうしても冗長に感じてしまうのは私だけだろうか?

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『幕末純情伝』

(1991(平成3)年)

つかこうへい作の映画化。

上にも書いた沖田総司が女性だったせいで巻き起こる恋愛模様と、龍馬暗殺を織り交ぜた青春(?)映画。

坂本龍馬は若き渡辺謙さんが演じている。

”面白くしよう。面白くしよう”とすればするほど、何もかもスベっていく感じがイタい。

そんな意地悪な見方で観るのなら楽しめるかもだけど、個人的には別に観なくてもいいかな?と感じてます。制作者の方々ごめんなさい。。

 


話は少し横にずれるけど、『幕末純情伝』というタイトルとよく似た(というより、『幕末純情伝』というタイトルは、この映画の影響だろうと思っている)『幕末太陽傳』(1957(昭和32)年)は必見の一作だ。

ちょっと乾いたシニカルなコメディ映画なのだけど、上の映画とは躍動感も、筋立ても、画の力、役者の力量なども、全ての桁が違う。

鬼才・川島雄三監督の遺作にして、まさに最高傑作だと思います。

もし機会があれば是非是非ご覧ください。

 

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 『竜馬の妻とその夫と愛人』

(2002(平成14)年)

バブルが弾けて以降、坂本龍馬を描く映画は激減した。

それに代わって新撰組を描く映画は増えているように感じる。

どういう相関関係があるのか、また、それは私の思い違いで、別に何もないのかは定かではないけど、なんとなくそう感じる。

この映画に至っては、坂本龍馬はただのそっくりさんだ。

その龍馬のそっくりさんを演じているのは江口洋介さん。

江口さんは、後にNHK大河『新撰組!』で、本物の坂本龍馬を演じることになる。

どちらも脚本は三谷幸喜さん。

時代モノに造詣が深い三谷幸喜さんには、坂本龍馬は江口洋介さんのように思えるのだろうか?

 

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●『龍馬はん』

「野暮ったい恰好してんけど、ああいうオトコは、案外オンナにモテんねんで。」

維新の志士、坂本龍馬が暗殺された近江屋で、真っ先に殺された力士・藤吉の目に、龍馬や幕末の侍たち、町民の暮らしはどう映っていたのだろうか?

倒幕、維新の立役者として名高い坂本龍馬・中岡慎太郎の陰で、ひっそりと20年の命を閉じた藤吉に眩しいほどのスポットを当て、涙や感動・笑いやほのぼのなどをいっぱい詰めた、嶺里ボーならではのユニークで豪快な一作です……

 

以上10作品を取り上げてみました。

ここでは新品DVDで入手できるものだけをリンクしておきましたが、中古で入手可能なものもあるので、観たい作品があれば直接調べて頂けると幸いです。

後記になりますが、当初は他のジャンルと同様、おすすめ順に並べようと試みたのですが、なんとなく居心地が良くなかったので、時代順に並べました。

映画は、他のジャンルよりも強く、その時代の背景と共に生きているんだなぁと改めて感じた次第です。

読みづらく感じる点も多々あったと思いますが、寛容な心で見て頂けるよう願っています。

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