・『汗血千里の駒』(坂崎 紫瀾/著)
・『龍馬の天命』(阿井景子、阿部龍太郎、著者他8名)
・『龍馬はなぜ女にモテるのか』(美甘子/著)
・『坂本龍馬』(黒鉄ヒロシ/著)
・『龍馬と弥太郎』(童門冬二/著)
・『龍馬の船』(清水義範/著)
『汗血千里の駒』
坂崎 紫瀾(著)
(1883年)
坂本龍馬の存在を世に知らしめた快作。
戦後の坂本龍馬ブームの火付け役になった司馬遼太郎の『竜馬がゆく』も、この作品がなければ生まれなかったといっても言い過ぎじゃないと思う。
自由民権派の新聞「土陽新聞」に連載された坂崎紫瀾の自由への渇望が火傷するくらいアツいのに、なぜか爽やかに感じるのが不思議だ。
当時話題になった挿絵のレトロ感も満載で、娯楽作としても龍馬本としても最高の一作☆
↑上へ戻る
『龍馬の天命』
その他
(2010年)
8人の作家による龍馬にまつわる短編集。
中でも、龍馬の姉・乙女の思いを綴った、阿井景子さんの『乙女』と、神戸の操練所で出会い、海援隊を共に築いた陸奥宗光との関係を描いた津本陽さんの『うそつき小次郎と竜馬』は、龍馬という人物像をイメージする上で、とても面白くて好きだ。
また、どの作品も、どこか司馬遼太郎との違いを探っているようで興味深かい。
↑上へ戻る
『龍馬はなぜあんなにモテたのか』
美甘子(著)
(2009年)
坂本龍馬の史実を語る関連本は、本当にたくさん出ているけど、冗長だったり偏ったりしているものが多くて、それにホントにつまらない。。
それを思うと、その関係はこの一冊でほとんど事足りるかもしれない。
史実として曖昧なところや、噂話を、ちゃんとそう断った上で書いるところに誠意を感じるし、トリビア的なところもしっかり拾っていて、表紙が堅苦しくて、中身が暑苦しい他の龍馬本よりずっといい。
なによりも龍馬を取り巻く女性達の記述が多いことで、龍馬を人間離れしたヒーローから、地に足がついた人間に引き戻してくれているようなところがとても好感が持てた一冊だ。
↑上へ戻る
『坂本龍馬』
黒鉄ヒロシ
(1997年)
坂本龍馬の史実を辿るだけなら、上の『龍馬はなぜあんなにモテたのか』一冊で十分だと話したけど、それに付け加えるとしたら、龍馬と同じ土佐の生まれの黒鉄ヒロシさんの『坂本龍馬』を推したい。
もちろん、この本はただ史実を辿るのではなく、漫画として楽しませてくれて、様々な想像力を働かせたくなる疑問もいっぱい投げかけてくれる。
そういった意味で、もし「龍馬のことは知りたいけど、文字ばっかりだと疲れちゃう。」という人がいたら『お〜い!竜馬』よりも、こちらをお勧めしたい。
『お〜い!竜馬』の最後の場面は、私には「小山ゆうさんの気持ちは次回作でいっぱいなんだろうなぁ」と感じるくらい散漫なものに思えた。
それと比べて、黒鉄ヒロシさんの、龍へと昇華する龍馬の絵は、作家のこの作品への、そして龍馬への思いが感じられて、とても愛おしい。
↑上へ戻る
『龍馬と弥太郎』
童門冬二(著)
(2009年)
著者・童門冬二さんは本当にいい人なんだと思う。
龍馬と弥太郎の二人を、また、当時の人々を、どれも、とても優しい視点で追っている。
そして、時系列を丁寧に並べながら、龍馬の魅力と商人としての限界、弥太郎の野望と可能性を語っている。
その童門さんが、後にNHK大河ドラマ『龍馬伝』は真実と違うと結構強めに語っていた。
『龍馬伝』は、弥太郎を語り部にして龍馬の人生を追っていく話なのだけど、その内容が史実と大きく異なると言う。
実際、岩崎弥太郎は、坂本龍馬と子供の頃からの知り合いではないし、様々なところで史実と違うところがあったのは確かだ。
その『龍馬伝』の中で、暗殺に向かう見廻組に向かって、やけになった弥太郎が「あんなヤツ殺してしまえ」というようなことを言うシーンがある。
その後、龍馬は見廻組に殺される。
町の噂では、後の三菱の巨大な資産となって行く『いろは丸』の損害賠償金の件や、龍馬暗殺の頃の記述があるハズの弥太郎の日記を三菱財閥が買い上げて、未だに公表を拒んでいる件など、弥太郎が龍馬暗殺に何か関わっていたんじゃないか?と騒がしいのも事実だ。
このシーンは、そんな弥太郎にまつわる噂話への、脚本家・福田靖のレスポンスなのだろうと感じた。
歴史家は真実のようにウソを語り、小説家(福田靖さんは脚本家だが)はウソの中に真実を見出そうする。
そういう意味では、童門さんは歴史家に寄った作家なのかもしれない。
↑上へ戻る
『龍馬の船』
清水義範
(2009年)
船オタクで、新し物好きで、好奇心いっぱいな龍馬って、坂本龍馬が好きな人なら、ほぼ共有されてるイメージだと思う。
船に乗りたい一心が、脱藩にも、亀山社中にも、そして薩長同盟にまで繋がってゆく。
それが「欲」ではなく「希望」になって結ばれてゆくところが、清水義範さんの良さなんだと感じた。
ネタバレ的になるけど、目次で大体の察しはつくと思うからお話すると、この話はいろは丸の一件からちょっと経った辺りで終わってる。
ここから以降の龍馬は、何をやったかを追えば本当にたくさんの資料があるのにも関わらず。
そこに清水義範さんの心意気を感じる気がする。
龍馬を、ある意味で、ただの船好きとして描くことで結実した、清々しく、心が和み、あたたかくなる良書だ。
↑上へ戻る
番外になりますが、上記の本と共に、私、嶺里ボーが書いた『龍馬はん』も紹介させてください(^^)
この作品は、坂本龍馬が近江屋で暗殺された日に、その暗殺者の手によって僅か20年の生涯を閉じた藤吉の視線で、龍馬を、そして幕末の世の中を見つめた物語です。
龍馬ファンの方も、また、初めて龍馬に触れられる方にとっても、楽しんで頂ける作品だと思いますので是非ご購読ください☆